宿った命

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私の仕事の休みの日と、浩二のバイトの休憩の時間を合わせて、産婦人科に向かった。 「栗原さん、どうぞ~。」 待合室で名前を呼ばれる。 待合室で浩二はずっと手を握っていてくれた。 そんなちょっとした事がとても嬉しかった。 未来に明るさを感じた。 待合室から、呼ばれた部屋へと入る。 冷たい器具を入れられて、検査が始まる。 何もかもが初めてで、緊張が走る。 「栗原さん、こっちへどうぞ。」 変な椅子からおりて先生と向かい合って話しを始める。 「栗原さん妊娠してますね。」 やっぱりそうなんだ。 嬉しい気持ちと戸惑いの気持ちが両方出てきた。 「今何ヵ月なんですか??」 「今2ヵ月ですね。 産むの希望ですか??」 「まだ決めてないんです。」 「そうですか… 中絶される場合は早めにお願いしますね。 一応中絶の同意書も渡しておきますから。 産むのを決めた場合は、破いて捨ててしまって下さい。」 中絶… この先生は、なんて簡単にこの言葉を使うんだろう…
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