届かぬ想い…

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しばらく自転車を走らせ、着いたのは小さな公園だった。 空はどんより雲っていて、今にも雨がふりだしそうだった。 「俺、考えたんだケド…。」 浩二の言葉に振り向く。 「やっぱり、産んでとは言えない。 堕ろして。」 ………。 一瞬思考回路が止まってしまった…。 今、堕ろしてって言われたの…?? 「嫌。」 驚く程自然に口から出た言葉だった…。 私、やっぱり産みたいんだ。 「私、産みたいよ。 だって、お腹の中で生きてるんだよ。 それを簡単に殺したりなんて出来ない!!」 「産んでも育てられないだろ?? お金はどうするの?? 仕事はどうするの??」 「仕事なんてどうでもいい!! 今はこの新しい命のが大切だよ。」 言いながら頬に涙が伝う…。 「ムリだよ。 堕ろそう。」 「嫌だぁー。 産む。 絶対産むの。」 まるで、小さな子供が泣きじゃくるように泣いてわめいた…。 「俺等じゃムリなんだよ。 わかって…??」 そう言って浩二は優しく抱き締めて来た。 私は浩二の腕の中で、ただただ泣くしか出来なかった…。 「堕ろした後、俺そばにいるから。 なっ…??」 私には、もう頷く道しか残されていないの…?? 雨まで降りだして来た…。 まるで、私の気持ちの様に…。
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