化け猫

2/10
前へ
/226ページ
次へ
「お客さん、猫、飼ってるでしょ?」 信号が赤から青に変わり、徐々に加速するタクシーの中、運転手は言った。 その目線の先は前方中央部にあるバックミラー。そこに映るは後部座席に座る一人の女性であった。 水色のワンピースを着た、髪の長い美しい女性。 運転手はさらに話を続けた。 「私も昔、田舎の実家で飼っていてね。分かるんですよ。猫の臭い」 夕焼けに染まる空の下、カチカチとウィンカーの音を鳴らしながら、車が右折する。 このタクシーが女性を乗せたのは、つい先程。行き先は○×町にある彼女の自宅であった。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6838人が本棚に入れています
本棚に追加