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「お客さん、猫、飼ってるでしょ?」
信号が赤から青に変わり、徐々に加速するタクシーの中、運転手は言った。
その目線の先は前方中央部にあるバックミラー。そこに映るは後部座席に座る一人の女性であった。
水色のワンピースを着た、髪の長い美しい女性。
運転手はさらに話を続けた。
「私も昔、田舎の実家で飼っていてね。分かるんですよ。猫の臭い」
夕焼けに染まる空の下、カチカチとウィンカーの音を鳴らしながら、車が右折する。
このタクシーが女性を乗せたのは、つい先程。行き先は○×町にある彼女の自宅であった。
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