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普通の人なら、まず通る事のない、車一台が通るのがやっとの道がそこにある。
舗装もろくにされていないその道路の両脇には、草木が生い茂り、それはまるで薄暗いトンネルの入口のようであった。
「この道を進んだら山を登る事になるけど、本当にこの道で良いんですか?」
道の入り際に停車して運転手は尋ねた。女はゆっくりとうなずく。その時だった。
にゃあ。
と、猫の鳴き声が聞こえた。
「え、ええ?」
驚いて後ろを振り返る運転手。だが、後部座席には女性が一人、座っているだけであった。
「どうしました?」
「い、いえ。何でもありません。この道を進んだら良いんですね」
ハンドルを握り直して運転手は言った。
車内に漂う猫の臭いは、今もなお漂ってる。
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