6838人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
「息子さんに、捨ててこいと言った…のですね?」
女は言った。
運転手は言葉を返す事ができない。ミラー越しに感じる女の視線が恐ろしかった。
にゃあ…。
「うわぁ!」
思わず悲鳴をあげてしまった。空耳だ。そうに決まってる。
突然、クスクスと女の笑い声が聞こえた。
「その子猫ちゃん、いま、どこにいると思います?」
「知らない…知らない!」
アクセスを踏む足に力が入る。早く山から降りたい。助けてくれ!と運転手は歯を食いしばった。
「案外、運転手さんの近くにいたりして。子猫ちゃん」
にゃあ。にゃあ。にゃあ。
「そんなはずない!そんなはずないんだ!」
「まだ分からないんですか?ヒントを出してあげましょう」
そう言うや、ヌッと運転手の脇から女の白い手が伸びてきた。
「ひっ!」
その手の中には、無数の猫の毛が握られていた。
「うわあぁ!」
「今から、正解を見せてあげます」
そして、運転手の断末魔のような叫びが車内に響いた。
最初のコメントを投稿しよう!