化け猫

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「息子さんに、捨ててこいと言った…のですね?」 女は言った。 運転手は言葉を返す事ができない。ミラー越しに感じる女の視線が恐ろしかった。 にゃあ…。 「うわぁ!」 思わず悲鳴をあげてしまった。空耳だ。そうに決まってる。 突然、クスクスと女の笑い声が聞こえた。 「その子猫ちゃん、いま、どこにいると思います?」 「知らない…知らない!」 アクセスを踏む足に力が入る。早く山から降りたい。助けてくれ!と運転手は歯を食いしばった。 「案外、運転手さんの近くにいたりして。子猫ちゃん」 にゃあ。にゃあ。にゃあ。 「そんなはずない!そんなはずないんだ!」 「まだ分からないんですか?ヒントを出してあげましょう」 そう言うや、ヌッと運転手の脇から女の白い手が伸びてきた。 「ひっ!」 その手の中には、無数の猫の毛が握られていた。 「うわあぁ!」 「今から、正解を見せてあげます」 そして、運転手の断末魔のような叫びが車内に響いた。
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