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「っ…くだらないくだらない…何考えてんだ」
もし麻袋の中身をすれ違う人々に与えたら――そんな想像をしていると、いつの間にかこの街の事を考えてしまう。理解しようとしてしまう。
くだらない事は考えるな。
生き延びる事だけ考えろ。
そう、今はいかに高く『麻袋』を売るか考えればいい。
―――ピピッ
無機質な電子音――携帯が鳴った。
相手を確認して出る。
『キリ?今どこだ?』
こっちより先に相手が喋った。
「あー…南区の路地。そっちは…【トリカゴ】か」
声の向こうに流れる音楽に、相手の居場所を想像出来た。
【トリカゴ】は中央区の南にあるライブハウスだ。俺達の溜り場にもなっている。
『そう。俺一人で暇なんだ。カフェに居るから』
―プッ
いつもながら、要件だけ述べて一方的に切る相手。――【トリカゴ】までは15分くらいだろうか。
「……やれやれ」
俺は麻袋をジーンズの後ろポケットにねじこみ、目的地へ足を速めた。
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