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暗い路地、そのやや開けた位置にある建物。看板は崩れ落ちてはいるが、代わりに入口のドアに『トリカゴ』と書かれている。
中からは爆音が漏れる。ライブハウスのくせに壁が薄いのか、建物全体が震えている錯覚さえする。
南の路地から、一人、少年が歩いて来た。
パーカーとジーンズ、スニーカー―『ありあわせ』の様な格好をしているが、幼いながらも精悍な顔つきが、違和感を感じさせない。
少年――美園 霧は【トリカゴ】の前まで来ると、一度右の後ろポケットを触り、辺りを確認する様に見回して、そしてライブハウスに入った。
ス―――
音も無く
路地より細い横道から影が現れた。
影は辺りを警戒している様だったが、すぐにライブハウスの入口へと向かった。
入る寸前、影が右手で何かを投げた。
扉の締まる音。
と同時に
「…がっ……ク…」
ライブハウスの横手から、胸にナイフの刺さった男が現れ、倒れ、動かなくなった。
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