日"常"

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「…思い出した。確かお前のファンの娘たちがそんな話をしてた…本当なのかよ」 呆れて声が裏返る。 そんな俺をよそに、 「当然だ」 と胸を張る勢いのルチ。 コイツに『当然』の正しい意味を教えなければ…と俺が真剣に考えた、その時。 「お前、袋を持ってるだろう」 地の底から響くかの様な低い声が、背後から俺の全身を貫いた。 「…ッッッ!」 振り向くと、背の高い痩身の男が立っていた。男は黒づくめの格好で、まるで影そのものだ。 「お前だ。袋を持っているだろう」 繰り返す影。顔つきからして、恐らく中国系。 ――もう華僑がかぎつけたか?―― とにかく商談のチャンスだ。 「…あぁ。全く情報が早いな。それでいくら欲しい?」 『いくら』とは、つまり量の事だ。 目の前の影が個人で動いているならそれほど大量には要らないし、金もない。 逆に大量に欲しがる様なら、バックに華僑連中が大勢いるとも言える。 ――後者なら値段を釣り上げられる。 そう言った意味を含めての質問だった。 しかし 「…?…寝言は死んでから言え」 男の行動は俺の想像の外だった。 男の右腕が上がる。 素手だ。 ナイフも拳銃も、その手に握られていない。 が。 デンジャーデンジャーデンジャー。 全身が危機を訴える。 コイツは ――――ヤバい。 俺は思い切り右に飛んだ。
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