名も無き一輪

1/1
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

名も無き一輪

吹き抜ける淡い風  静まりゆく水面 心で見たかった  この目にはもう映し出せない 未だに震えてる胸  遮られたあの道の 向こう側へ一歩踏み出せたなら  手を伸ばせたなら 悲しみの揺れるこの花に  深く口付けを落とし 伝う雫の意味を知りながら 戻れないあの場所に 澄み渡る空の青  この目には映し出せない 耳元で告げられた言葉  否定せずただ頷く あの時少しでも踏み出せたなら  手を伸ばせたなら 悲しみの揺れるこの花は  隣に眠る心に 欲しがった愛の温もりと  一雫を残して 流れるあの場面  過ちと気付いた痛み 堪えていたその分だけ  空は雨を降らせた 強く華麗な花でなくても  息途絶えてしまおうとも 辿り着くまでの道のりを  深く目に焼き付ける 揺ぎ無い心の目に
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!