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小学校の下校中、猫を拾った。
白い毛がグチャグチャに汚れた痩せた子猫で、眼病なのか目やにが酷く、おまけにノミまみれだった。
その日は昼から雨が降り、猫は濡れて、鳴く事もせずにじっとしていた。私は一度道を戻ってコンビニに入り、段ボール箱を貰い、それに猫を入れて帰宅した。
とりあえずタオルで拭いてやり、パンをやってみたが食べなかった。何とか食べさせようとしていると、母が帰ってきた。
母は猫を一目見るなり「ああ、この子はもう、今から病院連れてっても駄目だね」と言った。正直言って、私もそう思った。鳴かず動かず、パンも食べず、目やにで塞がったようになった目は既に閉じて、触ると暖かいから生きていると解るような状態だった。以前飼っていた下半身不随になった猫の、亡くなる間際がそうだったのだ。
私は猫のノミを出来るだけ取り、毛を梳いた。少しでも楽にしてやりたかったのだ。そして間も無く、猫は冷たく硬くなった。
翌朝、猫を土に埋めた。小さな猫を埋めるのは容易かった。
これも、あの猫の運命だったのかも知れない。一匹で雨に打たれ、ノミと目やにに侵され、ぼろくずのように汚れて痩せて、パンも食べられないまま数ヶ月の命を終える。そういう運命もあるだろう。あるだろうが、惨め過ぎやしないか。
あの猫が野良の子だったのか、誰かの家で生まれて捨てられたものだったのかは解らない。野良にしても、過去を辿れば捨てた人間、もしくは去勢をしないオス猫をふらつかせていた人間にたどり着くだろう。去勢をしないオス猫をふらつかせておくのは、間接的に猫を捨てる事に繋がる可能性がある行為なのだ。どうあれ、あの猫は、人間の手によって運命を左右された存在だった。
人間には、ペットの運命を左右する程の力がある、と、あの猫は身体を張って私に示した。捨てて忘れ去る事も出来れば、可愛がって可愛がって、その死に泣く事も出来る。私は出来れば後者でありたい。そう強く思わせてくれたのは、あの猫だった。
たった半日程度だったが、私はあの猫を飼った。
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