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この「お前が世話しろよ」という言葉、動物を飼う事の言い出しっぺが子供の場合、親は必ず言うだろう。
しかし大抵の場合において、主に世話をするのは親となるのではないだろうか。
うちはまさにそうだった。私は動物が好きであると同時に怠け者だった。真夏や真冬などの散歩には行きたくないし、丁度犬が腹を減らす時間といえば、テレビのゴールデンタイムである。まあそれなりに世話はしたが、怠ける私を見兼ねた親が、散歩や餌やりを行う事も多かった。
それでも犬は、私を飼い主と認めてくれる。私が帰宅すれば尻尾を振るし、噛んだりなど決してしない。有り難いものである。
ところで、私には弟がいる。
弟もそれなりに犬を可愛がっているのだが、犬の方は、何故か家族の中でこの弟だけをナメているようだ。
以前、私が散歩中にリードを持ったまま転んだ事があった。犬はすぐさま寄ってきて、いかにも「大丈夫?」といった感じに私にまとわりついた。
後に弟と犬の散歩に同行した時、今度は弟がリードを持ったまま転倒した。その時犬は、痛がる弟を気にもかけず数メートルに渡って引きずった。
見兼ねた私が犬の名を呼んで引き止めたのだが、転倒した弟が確実に目に入っているだろうに、犬は「どうかした?」という様子で散歩の続きを要求した。
確か当時、弟は小学校一年か二年生だった。が、幼稚園にいても自然に幼児に混ざれる位に小柄だった。その時既に大人だった犬が後ろ足で立ち上がれば、さほど身長に差が出ない程である。
弟は、そのサイズ故にナメられていたのだろうか。
現在、犬は13歳のご老人である。若い頃に比べると食べる量が減り、随分と痩せた。
それでもまだ元気である。
小屋の中でアクビなどして大人しく過ごしている犬は、まだ弟をナメているのか。それとも、弟の身長が伸びた今は、飼い主と認めているのか。
最早、後ろ足で立ち上がる事もしない犬に聞いてみたい所だ。
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