三日月の夜

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俺が無意識のうちに近づいてたみたいで。 今の久保ちゃんと俺の顔は、もうそろそろ唇が触れそうな、てか触れかけた距離。 今の俺にはすごく、遠いような気がする。 こんなに近くにあるのに遠すぎて届かない。 もう戻れない、戻らない。 無意識とはいえ知っていた筈だ。 ここまで来たら戻れないって事。 心の底で決めた筈だ。 どんな事が待ってても戻らないって事。 あと少しで触れられるのに。 「久保ちゃ………、色々…ごめん」 そういって近づけた顔をゆっくりと離していく。 久保ちゃんから顔を逸らすように上を見上げると、強い光を放つ三日月があった。 その光は俺を刺すように強く輝く。 痛みで暴れ出しそう。 久保ちゃんに抱きついて、たすけてって。 そんな痛みさえも強がりで無理矢理逸らす。 もう一度まわりの闇をみて気付いた。 この三日月、久保ちゃんに似てる。 こんなに強く輝いてるのに、今にでも闇に掻き消されそうなほどはかなく、淡い光。悲しそうな輝き。 この光に痛みを感じたのは、三日月の光が久保ちゃんの心に重なったから? ‡END‡
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