三日月の夜

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その後、なんもできない自分にイラついてきて、久保ちゃんに気付かれないように、ドアを蹴った。 そして、今に至る。 「久保ちゃん、なんだよ」 「なんでもない」 「じゃあ離せよ」 「………………」 こういう気まずい空気って俺、苦手なんだよな。 こんな空気作ったのは俺だけど……。 でも、真剣な顔で腕掴んでくれたことは、ちょっと嬉しかった。 ………でもやっぱり気まずい。 時間がすぎていくほど、空気は重さを増していく。 「久保ちゃん…」 耐え切れなくて、いつもより少し小さな声で名前を呼んだ。 その名前を呼んだ時、心が温まると同時にぎゅーっと締め付けられる気がした。 そしたら、目の前に久保ちゃんの顔があって。
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