序章

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  開け放たれた教室の窓から入ってくる風が、ふわりふわりとカーテンを揺らしている。 窓際の一番後ろの席に座っている少女…水上瑠華(みずかみ・るか)は暑さのためかろくに頭に入って来ない授業にうんざりしていた。進学校の高校3年生という事もあり、他の生徒は授業に集中している。 (つまんない…。) そう思ってふと校庭を見ると、丁度真ん中辺りに犬のような生き物が佇んでいる事に気が付いた。 (ミツケタ…。) 耳元でそんな気が聞こえたような気がして、思わず瑠華は辺りを見回すが変わった様子はなく…不思議に思って校庭に視線を戻すと、先程の生き物は煙のように消え去ってしまっていた。 この時、瑠華はまだ分かっていなかった。これが、これから自分の身に起こる不思議な出来事の始まりだったという事に…。  
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