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『この街で良ければ僕がもっといろいろな所に連れてってあげよう。』
あの人が、私と初めて出会った時に言ってくれた言葉。
恭平さんも同じ事を言ってくれた。
これは運命?
顔も、性格もそっくりな二人。
私を愛してくれたあの人。恭平さんは?わからない…いや、わかっちゃイケない。
私は、もう生きてはいないのだから。
それに、わかったら…きっと私は私自身がわからなくなる。
違う。今もわかってない。
まだ出会って間もない筈なのに…。
絶対に揺らぐ事は無いと思っていた思いが、少しずつ揺らぎ始めている。
どうして?あの人にはもう会えないから?恭平さんが今私のそばにいるから?
わからない…。
いつまでも自問自答が終わらない。
私は、どうすれば……。
「貞子さん?どうかしましたか?」
「すいません、少し考えごとをしてて…」
そうだ、こんな自問自答を繰り返していても何も変わらない。
私はいつかこの世界からいなくなる日まで、ここで何も考えずに楽しく過ごそうと決めたんだ。
余計な悲しみをつくらない為に。
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