□溺愛カプリッチオ□

6/17
前へ
/39ページ
次へ
桜の花が風に舞う美しい季節に私達は出会った。 静岡県では有名な調理製菓専門学校に入学し、最初に仲良くなったのが宮下沙菜だった。 不思議の国のアリスを思わせるような奇抜なファッションと、個性的なヘアスタイルで人目をひいていた沙菜は、とても人懐っこく、皆から好かれる存在であった。 沙菜には人を惹きつける魅力がある。 ノリの良さと、明るく面白い言動で、常に周囲を楽しませ、場の雰囲気を良くしてくれる。 女子特有のどろどろとした関係を嫌い、サバサバとした性格で、誰かに依存することはなく、自分らしさを大切にしていた。 そんな人間性が男子にも女子にも人気があったし、私も沙菜のそういうところが大好きだった。 そんな性格は幸か不幸か熱狂的なファンも多く、ストーカー行為に及ぶ者までいた程だ。 ストーカー行為は最低だが、私にはそうしたくなる気持ちがよくわかる。私も少なからず、沙菜にそういう感情を抱いたことがあるからだ。男女間に芽生える恋とはまた違う、なんともいえない狂おしく、いとおしい気持ちだ。 独占したい。 誰にも触れさせたくない。 沙菜が好きだ。 だが気持ちは伝えない。気持ちを伝えて、特に何かを変えたいわけでもないし、何より沙菜を困惑させたくない。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加