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自分の気持ちを押し殺して専門学校に通った二年間は、自分の事はそっちのけで沙菜の世話ばかりしていたように思う。私にとってそれは苦痛ではなく、寧ろ喜びそのものだった。
調理製菓の専門学校は二年制で、だいたいの専門学生は卒業前に就職が決まるが、沙奈は全く無頓着で、卒業してもまだ就職出来ずにいた。その時も、私の就職先であり、父が経営しているイタリアンレストランで働かないかと持ち掛けたが、まだ働きたくないからという理由で断られた。
やっと就職したかと思えば、静岡からは遠く離れた北海道で働くという。
沙奈は元々北海道出身で、家族も北海道にいるので、もしかしたら北海道に帰るのではないかと思っていた。だからこそ、私の元を離れないように、父の経営するイタリアンレストランへの就職をすすめたのだった。
絶対に北海道には行かせない。
離れ離れになるくらいならいっそ…
「そういえば、九月はきのこが美味しい季節だな。」
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