~オープニング~

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少女は、大理石で造られた白い床の上を軽い足どりで歩んでいく。 先程とかしたライトブラウン髪の毛が、少女の足どりに合わせて右に左にすべらかに揺れて、まるで彼女の機嫌を表しているようだ。 少女の行き先は、ミスティル本部。彼女の仕事場だ。 そして、今少女が歩いているのは、彼女の部屋と仕事場を繋ぐ天空廊下。彼女の部屋、と云うよりミスティルの隊員寮は、本部と中庭を挟んだすぐ裏手に建てられているので、此処を渡ればものの数分で仕事場に着く。 ほぼ正方形の形をしたこの空間には、幾つもの窓が備え付けられており、そこから入ってくる射光が白い床に反射して、空間内を明るく照らしている。 窓から見える風景は、いつもと変わらない。何の変哲もない、芝生の生えそろったただの中庭。 いつもあの人が、仕事をサボって寝転がっている古いベンチのあるただの中庭。 ここまで考えて、少女は一人くすりと笑う。
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