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今思い起こしても胸が躍る。
少女の顔は一掃にやけ、途中ですれ違う何人かの人、掃除のおばちゃんや魔導師風の格好をした女性、剣士風の女性が奇異の目で彼女を見ていく。
少女は表情そのままに廊下を抜けると、少しだけ辺りが喧しくなった。と、同時に何やら香しい匂いが彼女の鼻を撫でる。
原因は解っていた。廊下を抜けたすぐ隣に食堂があるのだ。食堂はガラスの隔壁で区切られているだけなので、中を見るのはたやすい。
百人は有に入れそうなだだっ広い食堂には、ちらほらと人影が見えた。
ぐぅ、と少女のお腹が一言、食物を要求する。少女は恥ずかしそうにお腹を押さえると、
(がまん、ガマン、我慢)
と、強く念じながら、足早にその場を後にする。
食堂の手前にある、豪華な飾りつけを施された階段を降りると、またもやだだっ広い空間に出る。
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