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あれは、中学二年生の夏。
修学旅行の帰りのバスで、照太は斜め前の席をずっと見ていた。
そこには、凛が座っていた。
いつもの笑顔で、友達と話していた。
「照太ぁ、何ジッと見てんのー?」
通路を挟んで、向かいに座っている春香が話し掛けてきた。
「べつに、なんも見てねぇよ。」
「嘘。さっきからずっと、凛の事見てる。」
春香にはばれていた。
「本当に凛の事が好きなんだねー。」
「黙れ。お前だって、公彦の事好きなんだろ。」
「昔の話しでしょ。今は違うもーん。」
「誰だよ?」
「教えなーい!」
そう言って、春香はそっぽを向いた。
「なんだよ…」
照太はまた、頬杖をついて、凛を眺めた。
………気が付くと、山の中を走っていた。
照太は一時間程、眠っていたらしい。
目をこすって周りを見ると、バスには誰も乗っていなかった。
夢を見ているのかと思い、立ち上がって、バスの中を歩いてみた。
ただ黙って進路を進む運転手も、くだらない事ばかり言うバスガイドも、教師も、友達も、誰も居なかった。
手の皮をつねると、痛みを感じた。
「夢じゃない……」
訳もわからないまま、自分の席に戻ろうとした。
すると、二人の人間が居た。
初代仮面ライダーのお面を付けたスーツ姿の男と、凛だった。
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