・第四編 忘却

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遠くに顔を埋める灯火は 残るは半分となっていた。   ──私には…   そこで 男の詩は 再び初めの リズムへと変わる。   ──あなたはどうしてここにいるの   赤毛の少女は訊いた。   ──海が綺麗だ   空が綺麗だ   砂が綺麗だ   雲が綺麗だ   男はやっと 三つ編みの少女の──<ロザリア>の姿を その瞳に映した。   ──花はどうして咲くのか   鳥はどこに飛んで行くか   風はどこに向かっているのか   月は何を照らすのか   しみじみと 一言、一言を 口にしていく詩人。   まるで── 自分がその全てを 経験したかのような そんな口調で 男は詠い続けた。   ──……詠いたい詩があるんだ
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