・第二編 濡れた足首

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ポロリポロリと 音を紡ぐは 艶やかな金の髪を風に靡かせた 碧い眼をした詩人。   その男は 陽の光を照らし返すその髪を 後ろで一つに縛っている。   ──行きたい場所があるんだ   守りたい女(ひと)がいるんだ   殺したい程に憎いものがあるんだ   男は詠い続けた。   その歌声は どこか儚さを 残していた。   ──旅人さん  真っ直ぐに伸びた赤毛の髪を 三つ編みで二つに縛った少女が 今にも潮水が 足につきそうな浜辺で 彼の詩を聴いていた。   ──あなたはどこから来たの  それに対し 男は空を仰ぐと 悲しみに満ちた言葉で 彼女に返した。   ──私の故郷   今もそこにあるのだろうか   青い芝生の匂い   海から吹き付ける潮風   今ではもう   そこは思いでの中   男は大きく息を吸った。   その時 彼らの足首が水に濡れた。   それでも 男の唇は止まろうとはしない。
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