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──大切な人はいますか
今も想い人はいますか
澄んだ蒼い眼をうっすらと開け
男は未だ詩を詠んでいる。
──約束が
詩人の口調がやや速くなる。
──私にはあるから
そのリズムは
決して遅くなることはなく
徐々にそれは増す。
──十と五つの月が昇る
その日の夜に
私は戻る約束をした
男が弾いている
その小さなギターの張り詰められた弦は
まるで
彼の心を表しているかのように
小さく震えていた。
──それが今日の日
星が瞬くその夜に
私は帰る
私は還る
男は尚も詠い続けた。
その時も
少女は彼の美しい歌声を
静かに
本当に一切の音をも出さずに
目を瞑り
聴き
そして魅入っていた。
──約束があるから…
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