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十年ぶりに再会した美幸ちゃんは成長していてもうチビとは呼べない女の子の平均身長をしていた。
あと首がキリン並みに長いけどこれは成長と呼んでもいいのだろうか。顎下は近所のホームセンターからタダでかっぱらってこれそうなビニール紐をくわえ込んでいる。斬新なネックレスですね、とお世辞を並べてみようと思ったけれど十年ぶりに話しかける第一声がそれなのはロマンチックに欠けると思い喉元で飲み込んだ。
涎が白い泡と共につーっと下る。蟹みたいだがそれよりももっと汚らしい。
フローリングからは漏れた排泄物の臭いがした。それが三人分。美幸ちゃんと、その奥にこれまた同じ格好で天井にぶら下がっている影が二つ。
──はじめまして美幸ちゃんのお母様お父様。家族揃ってぶら下がり健康法ですか、でも残念ながら伸びたのは首と俺の不快感だけですよ。
まぁようするに美幸ちゃんは家族仲良く無機物に絞め殺されていたのだった。あれ、紐って有機物?
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