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──大地の全てを洗い流すような激しい雨の中、俺は走っていた。
もう何時間走ったのか分からない。雨に打たれた身体は氷のように冷たく、両足はがくがくと震えて今にも倒れてしまいそうである。
されども倒れるわけにはいかなかった。絶対に、倒れるものか。俺は棒のような足を動かす。
向かう先には──彼女が待っているのだから。
何よりも誰よりも愛しい彼女が俺の助けを待っている。
「……今行くからな、美幸……っ」
だから──それまでどうか、無事でいてくれ……!
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