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「由紀子。夕べうなされてたけど、怖い夢でも見た?」
「え……ううん、見てないよ。」
私はあの夢の事を雅人に言わなかった。
言えない。夢だとは言え男に襲われたなんて…。
「そう。でも、ずっと止めてって言ってたし…」
雅人は心配そうな顔で私を見つめていた。私は何でもないと、笑顔を返した。
「すいませ~ん!」
玄関の方で声がした。
玄関へ向かうと一人の男が立っていた。背が高く痩せ型でどこか優しい感じが漂っている。
「すいません。私は旅をしているんですが、この辺りに宿はありませんか?」
この村の付近には観光地なんか無い。旅行者なんて来る事もまず無い。
「生憎(あいにく)この村には宿は無いんです。」
そう言うと男は礼を言い、足元に置かれた大きな鞄を拾い去って行った。
私はその男に何か不思議な物を感じていた。
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