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ある暑い夏の夜。杉浦家に親族が集まり宴を開いていた。
「いや~、今日は暑いなぁ~。陽が落ちても汗が引かないよ。」
叔父が広い額を手拭いで拭きながらグラスのビールを飲み干した。
「テレビでも今日は記録的な暑さだって言ってたし、それに今日は…。」
義母の美恵子が台所からいそいそと西瓜を持って来た。
「お義母さん、私も手伝います。」
私が腰を上げようとすると…。
「こらこら、妊婦が働こうとするんじゃないよ。いいからゆっくりしてなさい。」
今、私のお腹の中にはもうすぐ産まれて来る小さな命が宿っている。今日はその子供の誕生前夜祭だと皆が集まっていた。きっと皆でお酒を飲む口実に近いんだろうけど…
「母さん、今日はって何?」
夫の雅人が叔父のグラスにビールを注ぐ。
「何だお前知らないのか?昔話の事。」
叔父は注がれたビールを一気に飲み干した。
「あぁ、あの話か。」
雅人は鼻で笑うような仕草をした。
「あの話って何?」
「くだらない昔話さ。」
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