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心の隅でそう思っていても、結論は雅人を好きな気持ちでいる。愛してる。きっと、彼でなければ子供は作らなかっただろう。
人間それぞれ違いはある。嫌な部分が無い方が不思議だ。
由紀子は側に寄る雅人の手を掴んで、微笑んだ。
雅人は少し間の抜けた顔をして、優しく笑う。
この人との子供がもうすぐ産まれるんだ。少々の不安など、すぐに飛んでいってしまった。
家の外で車が、一台停まった。ガチャガチャ、と玄関の戸が開き、背の低い、白髪を後ろで結った老婆と、頭のてっぺんがみすぼらしい程に薄く禿(は)げ上がり、人柄の良さそうな中年男が現れた。
「すいません。突然で」
良幸は二人を出迎えた。
「構いせんよ。いつもの事じゃから」
産婆のシヅエは、顔をくしゃくしゃにして笑った。まさに梅干しのよう。
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