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「っ…たぃ!…はぁっ…」
由紀子は下腹部の激痛に顔をしかめ、着ている服は汗でびっしょりと濡れていた。由紀子の意識は、今にも飛んでしまいそう。
「由紀子ちゃん!ゆっくら息吸って~…」
シヅエの言うとおりに呼吸を合わせ、力んでは緩めるを繰り返していると、破水した。
「由紀子ちゃん。もう少しだからね~。頑張るんだよ~!」
側では雅人が、由紀子の手を取り、汗だくになりながら呼吸を合わせていた。
「由紀子!頑張れ!!」
「頭出てきたよ~!」
「もう少しだ!!」
…………………。
そして、永遠とも思えた出産は、十時間程で新たな命を産み出した。
生まれたての命は大きな産声をあげている。
「ォギャアァッ!!ォギャアァッ!!」
シヅエは赤ん坊を綺麗にくるみ、由紀子の側に寝かせた。
その小さな手に小指を持っていくと、しっかりと由紀子の小指を握った。
由紀子は、無事に誕生した我が子を見つめ、目から熱い滴を流した。
「由紀子。よく頑張ったな」
「うん」
雅人は由紀子の頭を撫でると、雅人も涙を流した。
「ありがとう」
しばらくすると、由紀子は疲れ果て、眠りについた。
夢ではない。
ただ、眠っている。
その眠りの中で、誰かが言った。
「アケノドウ」
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