嘲笑の陰

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頬が熱くなり腫れ上がっていく、手加減せずに打ち据えた証。 「小娘が盾突くな!お前は一人きりだと解ってんのか」 怒りで顔中を真っ赤にした男が怒鳴る。 「あなたに殺されたせいでしょ」 怯みそうになる心。 負けちゃダメ。 上から頭頂部の髪を掴まれた。 そのまま引きずり上げられる。 「痛い」 頭皮が剥がれそう。 「痛いなら大人しくしていろ!」 先程見えた制服の人が急いで駆けて来た、状況がはっきり確認出来ると険しい顔で声を上げる。 「おい、一体何やってるんだ」 血が上っていた男はやっとここが公道から丸見えだと気付いたらしい。 「か、関係ねぇだろ」 私の頭から手を離して男はふて腐れた口調で答えた。 頭がジンジンする。 多少は出血してるかもしれない。 「そちらはお客様なのでお知り合いでも遠慮して頂きたいのですが」 昨日、家具を配達してくれた人達。 今日も配達時間指定で組み立てをお願いしていたのだ。 殺風景な部屋に家具は必要だったし、暫く得意先になりそうな客に配達員達は笑顔で応じた。 アパートの敷地内で揉めていれば必ず配達員が通りかかる。 「恥知らず。あなたの脇見運転で両親は殺されたのよ」 息を整えながら言う。 配達員は射るような目付きを歯噛みしている男に向けた。 「お前、先々週の家屋半壊事故の運転手か?」
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