嘲笑の陰

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翌日。 帰宅ルートを変えた。 就業後ショッピングモールに向かう。 ショッピングモールならある程度の買い物は間に合うから夕飯や日用品に困らない。 残業があってもなくても同じ時間に買い物を済ませて帰路につく予定。 前はいろいろ寄り道していたけれど暫くは我慢しなくちゃ。 以前はバスを使ったり大通りを選んで帰宅していたけれど今日からは狭い路地を使う。 徒歩なら断然早く帰れる抜け道。 人気が少ないから使っていなかった。 じっくり確認する。 空き地。 薄暗い場所。 塀が高い場所。 人気がさらに減る場所。 じっくり考えながらアパートまで歩く。 大家の奥さんが玄関前に立っていた。 「あらお帰り、待っていたのよ」 私の顔を見て親しげに笑う。 「すみません、何かありました?」 何もなく立っている筈がない。 「あのトラック運転手が性懲りもなくやって来たのよ」 話しが長くなりそうだったのでとりあえず部屋へ上がって貰った。 手土産のお茶菓子を持って待っていたので、大家の奥さんもそのつもりだったらしい。 「最後は警察呼んで帰ってもらったけど……まだうろついてたら困るしねぇ」 自分が一緒に居ると思わせようと待っていてくれたそうだ。 「わざわざありがとうございます」 トラック運転手は執り成してくれと大家の奥さんに縋ったらしい。 明らかに無駄な行為。
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