嘲笑の陰

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意識してゆっくり動き穏やかな顔をしてテーブルに紅茶を運ぶ。 「お待たせしました、あのトラック運転手の話しに戻りますけど直接対峙は危ないですよ」 話題が変わって大家の奥さんはほっとした顔になった。 ぎこちない演技の気がしたが何とかやりすごせたようだ。 「そうよね、暴力に走るような男ですものね」 洋菓子のビニールを破りながら考えている。 見かけた場合大家の奥さんは隠れたまま警察に通報して欲しいと告げた。 心配してくれるのは有り難いが警察も事態を把握してるから大丈夫だと説得する。 危ない目に遭って欲しくないのは本当。 危険な目に遭うのは計画をした私だけでいい。 自分に降り懸かるなら自業自得だから。 翌日。 職場に無言電話が何度も入った。 おそらく相手はトラック運転手。 判っていて私は電話から離れた場所に居た。 電話の近くに居るのはパソコンで仕入を調べている男性従業員。 毎回、男性の声で応対されては私が電話に出るのではないかという希望も消える。 アパートには警察がすぐに現れる。 会社の電話に私は出そうにない。 今頃焦っているかしら。 口先だけ謝っておけば済むと思っていたのでしょう。 そうはいかないわ。 じれて不審な行動を繰り返せばいい。 全てはトラック運転手自身の不利になる。
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