嘲笑の陰

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休憩時間。 まだ若い職場の先輩に昨日起きた出来事を話す。 先輩は同じ男としては許せない行動だと憤った。 「危ないな、会社から出たところで待ち伏せているかも」 必ず来る。 もし今日来なくても近いうちに現れる。 「ええ、誰かが居てくれたらと思うけど相手は暴力男だし」 先輩は上司に打ち明け家まで送って貰おうと提案してくれたが、ショッピングモールまででいいと断った。 訝しがられないよう尤もらしい理由を付け加えておく。 数日の事ではないのでいつまで警戒するべきか不明。 期限無しで毎日送って貰う事は出来ない。 110番では事情説明等の時間が掛かるが、警察署の担当部署電話番号を携帯に入れている。 ショッピングモールは警備員が多く安全で、出入口が複数あるから待ち伏せしにくい。 夕飯等の買い物へ帰宅後に改めて出かけると、時間が下がってしまい付け狙われたら危険が増す。 そこまで説明しても先輩は食い下がった。 「上司も他の人も買い物ぐらい付き合うだろ、車だと安全だよ」 車は遠慮したい。 罠にかける為には自分も怪我を負う覚悟をしている。 ……けれど。 「しばらくは男性と二人きりの状態は避けたいです」 暴力を奮われた記憶は幼稚園児かその前後までだった。 成人男性の力は激しく衝撃的で、手が届く範囲内に入りたくない気持ちが強い。 「女性は暴力男なので万が一を考えると頼めないです」 私が言い終わる頃に休憩時間も終わり仕事に戻った。
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