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夕方。
職場の玄関を出た途端。
トラック運転手がこちらに向かってにやにや歩いて来る。
隣に居た先輩が私の顔を見た。
「あいつか?」
私は頷くと携帯を開く。
トラック運転手と私の間に立ち塞がる形に先輩が移動する。
「おい何だよ、話しぐらい」
トラック運転手の動きを先輩が手で遮った。
「挨拶もしなければ名乗れもしない奴を女性に近付けられないね」
挑戦的な目付きでトラック運転手を牽制する。
「部外者は黙っててもらえませんかねぇ」
減らず口を叩きながらもトラック運転手は後退した。
男相手だとすぐにおよび腰になる、その姿に先輩は呆れ顔になった。
「近寄れば警察に電話します」
私は携帯を開いたままトラック運転手の方へ突き出す。
「はぁ?」
聞き返す言葉はかなり高圧的。
私相手ならまだいくらでも脅せるというつもりなのだろう。
「話さなくていいと担当警官の方が言ってましたから」
担当警官のお墨付き。
嘆願に脅迫、あらゆる手段を使って自分優位に持っていくつもりが予定は崩れていく。
「まだ用があるのか」
呆れ顔を戻さずに侮蔑の視線を向けて先輩が尋ねる。
「う……あ、いえ」
トラック運転手は肩を落とし離れて行く。
先輩は勝ち誇った顔をしている。
あの男は粘着質だ。
大人しく帰る筈が無い。
ショッピングモールまでの道、何度かトラック運転手らしき男が隠れながらついて来ていた。
先輩はトラック運転手らしき男に気付いていなかった。
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