嘲笑の陰

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翌日、仕事から帰宅した私を運転手が待ち構えていた。 長い間待っていたと言わんばかりの押し付けがましい態度をしてみせる。 「こんな時間まで何してたんですかぁ」 小馬鹿にした話し方が鼻につく。 「仕事です」 夕方に帰宅するのが当然の筈だが待っていたアピールをする為に聞いているだけだろう。 大袈裟な身振り手振りでぐだぐたと話し続ける運転手。 何の用かと思えば仏前に今日も手を合わせたいと言う。 玄関を開かずに立ち話で済ませようとしていた私は眉をひそめた。 警官が居ないのにこの男をアパートの部屋にあげなければならないのか。 運転手は自責の念に駆られて訪れた訳ではない、ましてやその目には好色さが浮かんでいる。 私の服装は薄いピンクのブラウス、裾にレースが施された膝上のタイトスカート。 露出など無い代物なのに服越しに値踏みする視線が突き刺さる。 「すみませんが今日は帰ってもらえませんか?」 早くこの視線から解放されたい。 「はぁ?こっちがどれだけ待ったと思ってるんですかぁ」 私が非常識で人の気持ちを考えない人間だと文句を言い募る。 頭痛がしそう。 全く引くつもりは無いらしい。 「すみません、頭痛がしているのもので。それでは焼香だけ済ませて帰宅してもらえますか?」 申し訳なさそうにしおらしく言ってみた。 頭痛の種は運転手以外に有り得ないがさっさと追い返すには下手に出るしかないだろう。 私がアパートの扉を開くと運転手は勝ち誇った顔をした。
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