1.空に緋色が混じるとき

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「必要ないよ?だって、私が頼まれたんだから」 「でも席は早い者勝ちです」 空葉、あわあわ。 そもそも二人がなんで喧嘩するのかわからない。 「喧嘩しちゃだめだよ?ほ、ほら!僕の前空いてるから!」 「むぅ…わかったよ。空葉が言うんじゃ仕方ないか」 悔しそうに腰をおろした紅葉を優越感に浸りながら緋姫は見ていたが、次の瞬間には驚きに変わる。 「うん、紅葉いいこいいこ。偉いよ?」 空葉に頭を撫でられて嬉しそうに目を細める紅葉。 「え、えへへ…」 イラッ。 殺意が湧いた。 「空葉さん、先生が来ましたよ?」 「あ、本当だ。教えてくれてありがとね?」 「いえ、たいしたことじゃないです」 何を言ってるんですか私は。 今のは私も褒めてくださいって言うべきだったのに。 心とは裏腹に言葉は冷たかった。 けれど。 「ううん?助かったよ?緋姫ちゃん偉いっ」 「あ、あうぅ…」 頭を撫でられた瞬間、背筋をぞくぞくとした感覚が伝う。 「ほらほら、大森くん?女の子と遊ぶのは後よ~」 「は~い」 …邪魔な女です。 しかし、不満な顔なんて空葉には見せたくないので笑顔のままだ。
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