1.空に緋色が混じるとき

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「さ、行こ?」 「え…?」 「あれ?緋姫ちゃんも一回帰るかと思ったんだけど…」 「あ…帰ります!ついてきてくれるんですか?」 「うん、久しぶりに会えたからね。いっぱいお話ししたいな、って思って」 なんというか、名は体を表す。空のようにおおらかで四季を彩る葉のようにさまざまな顔を見せる。 にっこり笑う空葉を見てそんなことを思った。 「緋姫ちゃん、こっち向いて?」 「え…。!?…近っ!?」 振り向くと、空葉は精一杯背伸びをして顔を近づけていた。 昨日の睡眠時間はどうだっただろう。クマなんて有り得ない。朝見た限りだとニキビもなかったはずだ。今までできたことないし。 これだけ近いと全て見えてしまう。空葉のリアクションが怖かったが、心配はいらなかった。 「緋姫ちゃんの緋色の瞳ってすごく綺麗だよね…吸い込まれそう…」 びくっ、と跳ねる。 初めてだった。 両親すら気味悪がる自分のコンプレックスを、彼は綺麗と言った。 八代前の渚 緋乃という人は緋姫と同じく瞳も髪も緋色だったらしいけど。 つまり、緋姫以外には親戚にもいないため、気にしてくれる人は皆無で皆が皆気味悪がるだけだった。 それを彼は──褒めてくれた。
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