笑顔と泣き顔

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空葉は歩いていた。 目的なんてものはない。 彼は育った環境のせいか人とは少しズレていた。 普通の五歳児は自分から散歩を楽しんだりしない。 「ふぅ…いい天気だなぁ…。 原っぱでお昼寝したいなぁ…」 みたいな。 そんなことを毎日考えながら毎日散歩しているのだ。 だってしょうがないのだ空葉のお父さんは売れっ子の作家さんなんだから。 邪魔しても笑ってるけど、それじゃ駄目なのだ。 早く終わったら家族でピクニックだから、空葉は大人しくしているのだ。 「あ…ドーナツみたいな雲だなぁ…。…待ってよぅ…一口だけ…」 彼はズレているのだ。
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