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ふと、空葉は気づいた。
道の真ん中で赤いワンピースをの赤い髪の女の子が座っていた。一瞬だけ風になびく赤髪に見とれたけれどすぐに駆け寄る。
「どうしたのかな?おなか痛いの?」
「…あなた…だれ…ですか?」
見れば女の子は涙を目尻に浮かべていて足を押さえているところをみると転んでしまったようだ。
「僕、空葉。大森空葉だよ?君はなんていうのかな?」
まだ警戒したように疑ったような視線をぶつけながらも女の子はおずおずと口を開いた。
「私…渚 緋姫…」
「緋姫ちゃん?うん、覚えたよ?緋姫ちゃん、足に怪我してるの?」
キョロキョロと空葉は水道を探した。まずは消毒だ。
傷は洗わないとジュクジュクしたり、はしょ~ふ~になったりしていたいのだ。
お母さんが言ってた。
「…あそこまで…歩けるかな?」
緋姫は黙って首を横に振った。だよねぇ、と空葉も思う。
距離にして三十メートルは怪我をした五歳児には致命的だ。
仕方ないので空葉はお母さん方式を諦めてお父さん方式をとることにした。
「緋姫ちゃん、ちょっと痛いかもしれないけど我慢ね?」
「へ…?ひわっ!?」
ペロリと、さも当たり前のようにひと舐め。ばい菌よされ!とばかりにふた舐め。最後のとどめに舌をグリグリ傷口に押し付ける。すこしだけしみるようで緋姫は時折ぴくぴく体を震わせていた。
そう、水でしっかり洗うのがお母さん方式で、舐めときゃ治るがお父さん方式だ。
「よしよし、緋姫ちゃん偉いっ!ハンカチ巻くからまた我慢ね…?」
「は、はい…」
ポケットから真っ白なハンカチを出して手際よく傷にあてて巻いていった。
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