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「よしよし、緋姫ちゃん偉い偉い。…あれ?この匂い…」
「え?匂い?…もしかして私、匂いますか…?」
「ううん…そうじゃなくて…。緋姫ちゃん、後ろの屋根があるとこまでなら歩けるかな?」
立ち上がって、笑顔で燈也は緋姫に手をさしのべた。
「あ、はい…」
手を取って立ち上がり、なんとか屋根の下のベンチまで歩いて、腰掛けた瞬間。
ごうっ、と音を立てて雨が降ってきた。
「うわっ…!そ、空葉さんなんでわかったんですか!?」
「ん?雨の匂いがしたじゃない?」
いや、わからないし。
やはり空葉はズレていた。
雨は五分で小降りになってきた。夏特有の夕立だったらしい。
「うん、これなら平気かな?」
「えっ、なにがですか?」
緋姫が空葉の方を向くと、ズボンのポケットからレインコートを取り出した。
「えっ、行っちゃうんですか?」
ひとりで公園にいるのは平気でも雨が降っているとやっぱり違うのだ。緋姫は急に不安になった。
けれど───。
「へ?行くのは緋姫ちゃんだよ?はい、レインコート」
ポンと、空葉は自分の雨具を緋姫に手渡した。
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