1.空に緋色が混じるとき

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ふぅ、この地域の難関校と呼ばれた雨空学院でもテストは簡単でした。 けれど、通うことに意味が感じられません。 楽しくないですし。 小学校も中学校も、憧れの空葉さんとは一緒になるませんでしたし。 もう十年以上も顔を見てないです。 空葉さんは天然さんっぽいですから…やっぱりこの学校ではないですよね…。 入学式とかも、つまらなさの粋を集めたものでしたし。 あぁ、次は教室でしたっけ。 えっとクラスは……一組……ではないですね……二組……でもない……三組…あ、ありましたありました。 どんな方がいらっしゃるでしょうか…。暇つぶしに面白い名前の人を探しましょう。 あ行は…嗚呼 飯さん?(ああいいさん)この人以外に出席番号一番はあり得ませんね。 か行は…片 久里子さん(かたくりこさん)…家庭科とか無意味に得意そうですね…。 などと、ひと通り名簿を見てもう一度だけ見逃した面白い名前を緋姫は探し出した。 そして、あ行がスタートした。 「あ~…はないですね。 い~…はつまらないです。 う~…却下。 え~…論外です。 お~…………大森空葉?」 はて、と首を傾げる。 どこかで聞いたような。 なにか重要だったような。 何故か汗をかいたので、ハンカチで拭った。 ……ハンカチ? 点と点が結ばれ、緋姫は一年三組へと走り出した。
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