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「……」
男は相変らず口を開かない。ただジッと、机の上のナイフを眺めていた。
「お前がやったんだろ?」
「そうです」
「なぜ、なんだ?」
「……」
「言えない。……か」
刑事は苦々しく笑った。そして、
「付き合ってたんだろ?被害者の女性と」
ビクン。と、男の肩がわずかに揺れた。
「何年だったっけ?付き合ってから」
「……」
「確か」
刑事は、男に顔を近づけた。
「五年だったな」
「……はい」
「痴情のもつれだろう?」
男はしばらく間を空け、
「はい」
そう、答えた。
「そうか、痴情のもつれか。じゃあ、その辺を詳しく教えてもらおうか」
「それは……」
「言うんだ!」
一喝。精神的にもまいっていたのだろう。男はこれで観念し、ようやく事件の真相を語り始めた。
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