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浴衣の君と
甚平の僕
いつも強がりの君が
声をあげてはしゃいでる
僕の腕に自分の腕を絡ませて
右手に金魚の形のウチワ
君が楽しそうでよかった
人混みでも目に入るのは
頬を赤くさせた君の顔だけ
アナウンスが始まる
夏祭り最後の閉め
花火の打ち上げだ
空を見上げる君を見ている
花火なんて只の明かりでしかなかった
花火の音は心臓の高鳴りに思える
僕よりちょっと背が高い君を
下から見上げる僕
僕の視線に君が気づく
『何?花火見ないの?』
『いや・・・』
キザな言葉が頭をよぎる
『花火よっか君の方が・・・』
『何?花火の音で聞こえなかった?』
『いや・・・・・・なんでもない』
恥ずかしさを抑えきれず
空を彩る花火に目を移す
君は訝しげな顔をしながら
さっきの僕みたいに僕の横顔を見てる
僕は振り返ろうと思った・・・
振り返った瞬間・・・
僕の顔を見ていた君と目が合う
もう目を反らせなかった
君の瞳に吸い込まれそうで
君の肩に手を乗せて
顔を近づける
そして重なる唇
時が止まった気がした
花火も人混みも
僕らの世界に支配され
二人のキスを彩る
何秒たっただろうか
唇を離す
その途端、君が僕の肩を寄せて
『・・・・・・もう一度・・・』
再び重なる唇
唇を離した二人は
恥ずかしさと気まずさに
視線を落とす
空には満面の三尺玉
二人の恋を彩る
最高の花だった
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