『        』

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          ――歌がきこえる…       心地良い…優しい声                …目が覚める。毎度のコトだが目が覚める。     「ぁー………またか」     幼い頃に聞いたことのあるような、だが、それとは違う優しい…優しい歌。     「…一体、誰が唄っているんだろうな…」     空を見上げつぶやく。 冬の冷たい空気の残る、透き通った空。   ふと、私の足に何かがすりよってきた。     「…っ………ぁあ」     この仕事場の裏庭にいると、必ずといっていいほどやって来る猫だ。 黒の美しい毛並み。青のリボンに金の鈴。リンと涼しい音を響かせる。     「……お前か?」     あの旋律の持ち主は。   美しい歌。その鈴の音が唄うのか。     ご機嫌とりにあごをなでてやる。 すると、ごろごろと喉をならし、そんなわけないだろ、と我関せず。眠りこけてしまった。  
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