峠の地蔵

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  昔々ある峠の中ほどに 小さな地蔵があった。 地蔵の向かえには小さな茶屋があり、そこの娘の佳代は毎日、地蔵の世話をしていた。 新しい花を供えながら佳代はいつものように地蔵に語りかけた。 「おはようございます、お地蔵さん。今日も良い日でありますように…」 その地蔵は小さいながらも大変御利益が授かるという事で、遠くからも参りに来るほどの立派な地蔵であった。 「どうか、健康な子が授かりますように」 「どうか来年も豊作でありますように」 「どうか主人が出世できますように」 地蔵は人々のいろんな悩みや願いを聞いてきた。 出来ることはしてあげた。 まずは、その本人の日々の行いが大事だと、心の中に話しかけた。 そのせいか、こうして御礼参りに来る者も後を絶たない。 「元気な男の子を授かりました。本当にありがとうございます」 お供え物は茶屋のおはぎが多かった。 茶屋のおはぎは地蔵の大好物になった。  
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