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「こん…に…ちは」
「ああ~、喋れるようになったんだねぇ! りっぱなもんだよ」
畑で取れたとうもろこしをおすそ分けに来た妙子は嬉しそうに言った。
「そうなんだよ。昨日ぐらいからポツリポツリと話し始めてねぇ」
ヨネは、その深い皺がより一層深くなるほどに、にっこり微笑んで返した。
「そらぁヨネさんも嬉しいだろうさ。息子さん小せぇときに亡くしてしもうたからねぇ」
「まあ、息子と比べたらいけんけどね、姿、形はちごうとっても、やっぱり可愛いもんさ」
妙子は身を乗り出し小声で心配そうに尋ねた。
「けど、警察に言わんでも、ええの?」
部屋の奥から出てきた良三が渋い顔で答えた。
「警察に言うと、いろいろ面倒やからな…」
「そらぁ、面倒な事になるわなぁ」
急に出て来た良三に少し驚きながら妙子は一歩、後ろへ下がった。
「だから、妙子さん、お願いやから、警察には言わんでね」
真剣な顔でヨネが頭を下げた。
「そらぁ、わかっとるよ。誰にも言わんよ。じゃあ、行くわ。とうもろこし、よかったら又、持ってくるし」
「ありがとうね」
頭を下げたヨネの声も聞かずに妙子は出て行った。
妙子が心配するのも無理はない。
その子…いや、背格好は小学生くらいだが、実際のところ子供か大人かわからない。それどころか男か女かもわからない。
深い緑色の肌にオレンジがかった金色の目
確かなのは人間じゃない事ぐらいなのだから。
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