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「あ…、警察の者ですが…」
黒い車から降りてきたのはスーツ姿の二人の男だった。
「何か、こちらに緑色の変な生き物がいると通報がありましてね」
「そ、そないなもん、おりません」
ヨネは彼等と目を合わさず奥に引っ込んだ。
「じゃあ、調べさせてもらいますよ」
「ああ、好きなようにしたらエエ」
苦虫を潰したような顔で良三が答えた。
彼等は家の中を捜しまわり、やがて倉庫に気が付いた。
「あっ、そこは…」
良三の制止を振り切り、彼等は倉庫の中に入ってしまった。
しばらくして倉庫のドアが開き、緑の子が出てきた。
良三が倉庫の中を覗き込むと二人の姿はなかった。
「あの人達は?」
「ああ…ちょうど…よかった。ジッケンに…つかった」
「実験?」
緑の子は大きな機械を倉庫から引っ張り出してきた。
「おじぃさん…。おばあさんを…よんできて…」
緑の子に言われるままに良三はヨネを連れてきた。
「この…まえに…たってください」
緑の子は機械の前を指さした。
「なんだろねぇ、写真でも撮るのかえ?」
「そんなモノでは…ありません。わたしの…シゴトは…このホシを…ショウキョすることです」
「ショウキョ?」
「ああ…アオジル…おいしかったです。ありがとう」
緑の子が話し終えた瞬間、機械は周辺の光をゆっくりと吸い込み始め、やがて大きな風圧がヨネと良三、そしてその後ろにある全てのものを飲み込んだ。
緑の子の視界に入る全てのもの…ヨネと良三はもちろん、その後ろの田畑も森林も、そのまた向こうの山の木々も、その全てが一瞬にして灰になった。
「まだ…パワーぶそくだ。カイリョウしなければ…」
緑の子……
彼は異星人である。
彼に恩や情などというものはない。
恩や情……
それはこの星だけのものだから…。
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