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1.最後の言葉
長い夢から醒めた。
そう。それは本当に長い長い夢だった。
僕は君にいつまでも愛されてるという幻想を抱いていた。
でも、それは幻想。
君は告げる。
何かが違う。
君は昔から口下手だったから、曖昧な一言だったけど。
それは君の真摯な気持ち。
僕は本当に君を愛しているから。
もう会わない。
そう告げた君にただ俯いて。
うん。
そう告げた。
吐き出す紫煙は宙を舞い。
部屋を出る君を見送る。
最後の我が儘。
自分に言い聞かせ君の背を抱く。
馬鹿な女。
そうだよね。
吐く台詞は些細な抵抗。
走る痛みを振り払い。
君の背を押す。
最後に聞いた君の声。
ありがとう。
ごめんなさい。
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