苦肉の策

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    俺は一人暮らしを始めても、数ヶ月に一度は地元に帰っていた。 別にホームシックになったわけじゃないから誤解はしないでほしい。   頻繁に帰省する理由は何かとゆうと、馴染みの散髪屋で髪を切るためだ。 「いつもの」と言うだけで理想の髪型にしてくれるし、何より気を遣わずに済む。     人見知りが激しい俺は新しい散髪屋を探して、店の人に切ってほしい髪型を一々説明して、ぎこちない会話などしたくない。 しかし今回はどうしても地元に帰れそうにないので、仕方なくこっちで髪を切る事にした。 俺の住んでるアパートから徒歩数分の場所に散髪屋がある。 少しばかりの緊張と不安を抱えながら、俺は店のドアを開けた。   壁は一面真っ白で少し気構えてしまったが、床に落ちてる髪の毛のせいで清潔感が台無しだな…   イスに座ると小太りのおばさんが 「お客さん初めてですよね?この中から切ってほしい髪型を選んでくださいね」と言いながら俺に本を渡した。   表紙を捲ると何人ものモデルが色んな髪型をしていて、それが何ページもある。 目が疲れるし探すのが怠くなった俺は、とりあえず髪が短いモデルを指差して 「こんな感じで」と一言だけ言った。  
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