苦肉の策

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  するとおばさんが少し黙って 「う~ん…やってみましょう!」と力強く言った。   ちょっと…大丈夫か!? 今の言い方は明らかに初めてチャレンジする感じだったよ。   「もみあげはどうしますか?」と聞かれたので、 「少し短く」と言うと、 「じゃあ丁度良い感じにしますね」とおばさんは言った。   おばさんは濡れダオルで俺の頭を濡らして、さっき俺が選んだモデルの髪型を何度も見ながら髪を切り始めた。 ハサミの“チョキ”って音と、髪が切れる時の“ザクッ”って音の融合は俺にとっては心地よく、聴き入ると眠気すら感じてくる。 しかし俺はすぐに異変に気付いた。   その音は右耳からしか聞こえてこない。 するとおばさんが 「とりあえず右半分だけ切ってみたけど、どうですかね?」と正面の鏡と合わせ鏡で俺に変な髪型を見せた。   俺は自分の変な髪型に笑いを堪えながら 「はぁ…」と言うと、おばさんは嬉しそうに今度は左半分を切り始めた。   何なんだあれは!? あそこで俺がダメって言ったら修正できたのか? 左半分も切り終えて、ようやくまともな髪型になった。 洗髪台に移動して若い女の人に髪を洗ってもらい、また元の場所に。  
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